Sigur Ros(シガー・ロス)@Laugardalsholl, Reykjavik

会場となるLaugardalshollはスポーツ関連複合施設。
市中心部から、レイキャヴィークの目抜き通り、
Laugavegur通りをずっと歩いて40分ほどの所にある。
途中まではウィンドウショッピングしがてらで飽きない。
でも、ショッピングエリアを抜けた後の道程2/3ぐらいは、
ただの幹線道路。
ビューンと車が横をすり抜けていく中、黙々と歩くのみ。
ツライ、寒い、、、はずなのに、ちっとも、そうは感じない。
むしろ、肌を引き締める凍えた空気、ひと気の無い寂しさ、
街頭の侘びしいオレンジ色の灯りは、
レイキャヴィークの街へと自分を沈め、
頭の中には、いつしかSigur Rosの曲が流れ出し、
コンサートへの序曲を演出する。
 
開場7時の約20分前に到着。
20〜30人ほどが並んでいる。
僕のチケットは1階立ち見席。
よく見てみると特に整理番号らしき物はなし。
単純に並んだ順。
僕の前にはパンクスみたいな格好の10代半ばの女の子。
Sigur Ros?」って格好だけど、
『Flugufrelsarinn』を口ずさんでる。
僕も大好きな曲。
「そうそう、やっぱ良い曲だよねー」。
妙な連帯感を感じる。
 
コンサート会場は体育館。
広さはバスケットボールコート+周囲の観戦スペースぐらい。
長辺側の一方に横長のステージが設置され、
もう一方には、やぐらを組んで2階イス席が作られていた。
あとのスペースが1階スタンディング席だ。
パンクスの女の子はステージへとまっしぐら。
かぶりつきポジションを確保。
僕は後ろでゆるゆる見る方が好きなので、
会場を見渡してから、ロビーのグッズ売り場へ。
でも、今思えばもったいなかったかもね。
日本だったら、運次第の整理番号順。
早い者順だとしたって、
開場20分前で、かぶりつきって訳にはいかなそうだもん。
 
普段、グッズにはあまり興味を持たないのだけど、、、
こんなの初めてってぐらい、熱心に見てしまった(汗)。
まず、レイキャヴィーク会場限定という、
『Takk...』のジャケットのイラストをハンドプリントした、
T-シャツとパーカーを1枚ずつ買う。
これらはハンドプリントなんで、
インクのノリがそれぞれ違う1点もの。
あと、『Takk...』のジャケットの林のイラストが
プリントされた黄色いT-シャツも購入。
これは量産ものみたい。
来春の来日公演、無事チケットが取れた際には、
たぶん着て行くんで、そんな奴がいたら、たぶん僕です(笑)。
加えて、持ってなかったCD『Hlemmur』のサントラと
『BA BA TI KI DI DO』も。
こんなに、会場でモノ買ったの初めて。
やっぱ、海外だと気が大きくなるもんですな。
 
ロビーは、ビールやコーラを飲んだりしながら
歓談する人たちでごった返し。
ちょっとオシャレにキメてる年輩の人なんかもいてね。
こんな時間の楽しみ方は、日本人より欧米人の方が上手いなあ。
買い物を終えた僕と親父がビールを飲んでると、
日本語で声をかけられる。
「日本から来たんですか?」「これ聴きに来たの?」
「日本からは何時間ぐらいかかるの?」「楽しんでね」。
とても上手な日本語。
いやいや、驚いた。
 
8時を30分ほど回った頃だったかな、
オープニングアクトのAminaがステージに現れる。
鉄琴のキンとした音が、外の凛とした冷たい空気を思わせる一方で、
弦楽器の暖かい音が心緩ませる。
シガロスの音との相性は、もちろんバッチリ。
本編へと場を暖めるには最高のオープニングアクト
 
そんなAminaを聴きながら、大きな計算違いに気付く。
ここはアイスランドだった。
皆、でかい。。。
それも、すんごく、でかい。
前の人々が、まさに壁のよう。
後ろでゆるゆる観ようと思っていたものの、
ステージ、あまりにも見えない。。。
 
Amina、40分ぐらいだったかな。
終わってしばしのブレーク。
その間の人の流れに乗って、もうちょっと前の方に行ってみる。
でも、どこにいっても、皆、でかい。
身動き取れなくなったところで、腹を決めて観ることにする。
 
9時も40分は過ぎだろうか、
ステージに幕が引かれ、暗くなる。
やっとだ!
ひときわ大きな大歓声。
そして『Takk...』のイントロが!
ながーく鳴り続けるストリングスの中、
メンバーたちの影がステージに現れ、位置につく。
このストリングスが、ながーくてね。
焦らされると言おうか、ドキドキ感が高められるのですよ。
そしてついに、ヨンシーの声が聞こえた瞬間、
「ここに来たんだ!」と思った。
そして、フジでもやった、幕を使った演出。
本当に美しいね。
この白と黒の世界は、静けさと激しさを操るSigur Ros
彼らのライブにこそふさわしい。
特に曲後半、
激しく高まる音と目映いばかりの光と影が交錯する様は圧巻。
鳥肌が立った。
この体育館が、またいい具合に音が反響してね、
光と音に包まれ、そこに慄然と立つ大きなヨンシーの影。
もはや体育館ではなく、完全にSigur Rosの世界。
我々のテンションも一気に跳ね上がり、彼らの世界へと没入。
素晴らしいスタートだった。
 
ほぼ、最新アルバム『Takk...』からの曲で進む。
何曲か終わった後、ビッシリと囲まれての暑さが辛くなり、
どーせ隙間からチラチラとしか見えないんだしと、
たまたま通った後ろへ行こうという2人組について、
後ろの方、元々いた辺りに行く。
全然ギチギチじゃない。さっきより、空いてる。
僕しかり、皆、始まったら、ついつい前に行っちゃうんだね。
人間の心理ってやつ?
オマケに距離はあるけど、ステージもよく見える。
最初から動かなきゃ良かった。
 
『Andvari』の終わり、
Aminaの弦楽器が静かにゆったりと流れる後ろ、
黒いスクリーンに大きな赤い円がゆらめく。
陽炎に揺れる、沈む直前の夕陽のよう。
黒い闇の中に浮かぶ、物憂げな太陽。
魅入るほどに美しい。
しばらくして、『Takk...』のジャケットイラストの
少年(?)の黒い影が、円に浮かび上がる。
これは、ちょっと不気味(笑)。
 
演奏メンバーは、バンドの4人に加え、
フジ同様Animaの4人が弦楽器他で入り、
さらに管楽器9人がサポート。
勢揃いする曲では17人にもなる。
中盤の、いや、この日の最大の見せ場と言っても良かったのが、
この総勢17人で演奏された、『Hoppipolla』
『メズ・ブローズナースィル』(出ない文字があるので)
『Se Lest』『Olsen Olsen』と続いたところ。
圧巻。
 
『Se Lest』のラストでは、ハーメルンの笛吹のごとく、
一時さがっていたブラスの5人の隊列がステージ右手から現れ、
吹きながら歩き、左手へと消えて行く。
まるで、曲を引き取って次へと運んでいくかのよう。
単純だけど素敵な演出に今ライブ中でも一際大きな拍手が鳴った。
 
ブラス全員が加わっての『Hoppipolla』『Olsen Olsen』の
曲後半の館内に渦巻く音、大迫力。
まるで、音に触れるかのよう。
特に『Olsen Olsen』の壮大さたるや、
まばゆいばかりの素晴らしいライティングと相まって、
煌めく壮麗な城が、魔法によって、
大地から生えてくるかのように現れ、
見る間に立ち上がっていくようだった。
しかし、曲は不安をかき立てる不協和音で終わり、
夢を見ていたかのように、ステージも真っ暗に。
そう、外は暗い夜、零下、厳しい大地だ。
 
アンコールは2回。
1回目は2曲。
変わったベースの音が印象的な『Hafsol』、カッコイイね。
最後に皆の早弾きでグシャグシャになるのもイイ。
 
でも、グシャグシャな格好良さはオーラスの
『Untitled#8』の方が上。
最後に幕が引かれ、シルエットの演奏姿。
フジもそうだったね。
シルエットのパターンと幕に映す映像が目まぐるしく変わる。
激しくたかれ続けるフラッシュのようなまばゆさ。
テンションがどんどん上がり続け、トランス状態を呼び起こす。
決してピュアではない、黒さを内包した神々しさ。
この北の大地で炸裂するエネルギー。
この空間に身を委ねる快感。最高。
ドラムのオーリー、最後にはドラムセットをぶっ倒す。
このグシャンガシャンという音が、ライブに終止符を打った。
 
フジと同じく、2回のカーテンコールで、フィナーレ。
時計を見ると11時をゆうに回ってた。
 
最高のライブだった。
単純に音として映像としてもだけど、
やはりここレイキャヴィークで観たことは大きい。
曲を聴きながら、この2日で見たアイスランドの景色を想った。
真っ白な雪の美しさ、
10時でもまだ暗く5時にはもう暗い1日、
氷河と雪に覆われた雄大な景色、
苔が張り付くだけの溶岩台地を染める
濁ったピンクの不気味な夕焼け、
あちこちに立ち上る温泉の蒸気、ect。
こうした環境が、彼らの音楽に色濃く出ている。
それを強く感じながら聴けて、
ライブも、そしてアイスランドも一層強く体感できたと思う。
 
この僕が観たライブ、webで観られます。
http://www.sigur-ros.co.uk//tour/2005/20051127.php
あの渦巻く音の中に身を置くような迫力や場の熱気は、
残念ながら味わえないけれど、十分に素晴らしいので、
是非、どうぞ。
 
さてさて、来春、この感動を日本で味わえるのが、
首が長〜くなるほど待ち遠しい。
願わくば、このレイキャヴィーク公演と同じ編成で来て欲しいな。
 
最後の最後に、一緒に行った親父の感想を一言。
「全部、同じに聞こえた」。
ハハハハハ。
なかなかに言い得て妙。
笑った。

ただ今のBGM

上で紹介してるwebで観られるライブ。
溜め息が出てしまう。。。