巨匠から素人まで

去年のカンヌでパルムドールを獲った、
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督作品、
『ある子供』(原題『L'Enfant』)を朝一で恵比寿に観に行く。
 
パリ。小さな盗みを繰り返しながら、
その日暮らしの毎日を生きる若い男と、その彼女。
2人の間に子供ができる。
しかし、男は赤ん坊を売ってしまい…。
 
ほぼ全ての映画がそうであって当たり前なんだけど、
見事なまでに、全てがラストシーンのためにある映画だった。
設定、物語、カメラワーク、他あらゆるものが、
ラストシーンを導くために、引き立てるために、機能していて、
感心してしまった。
 
良い映画だと思う。
なんだけどね、
僕には、感動よりも、感心の方が上に立ってしまった。
もっと、心震えても良さそうな、いいラストシーンなのに。
 
たぶん、ラストに至るまでの過程に、
道徳的というか、寓話的というか、
「そりゃそうさ」「そういうもんさ」と思うことから、
はずれる部分が無かったからかな。
 
 
入場開始の集合へと向かっていた時に、
映画館の前で、友人にバッタリ出会う。
会うの、何カ月ぶりだろう。
その辺に住んでるわけじゃないので、ビックリ。
聞くと、ギターを習っているそうで、
その発表会が近くのライブハウスであるとのこと。
せっかくなんで、見に行く。
彼のバンドが終わるまでの数組を聞く。
正直、ヘタ。
発表会じゃなければ聞くに堪えないレベルのものも。
でも、下は中学生ぐらいから、上はおっちゃんまで、
皆、がんばってて、ちっともウンザリな気分にならない。
何かを上達するために、努力を続け、人前で披露するなんて、
凄いなあと、単純に感心した。
 
 
映画と発表会の間に少し時間があったので、
東京都写真美術館で『植田正治:写真の技法』展を見る。
広く空間をとりながら主題を浮かび上がらせる作図、
明暗の使い方に唸る。
ダリやマグリットを思い起こさせる、造り上げた作品群もあり、
そんなのを見ながら、この人は芸術家なんだなあと思った。
ただ、僕はその手のものに興味を覚えないけど。
もっと、ゆっくりと見たい展覧会だった。
 
 
夜、『チェブラーシカ(ЧЕБУРАШКА)』
最終上映を観に行く。
30年以上前のロシアのパペット・アニメーション。
年末年始のウクライナ他旅行の余韻のせいで、
ロシア語のタイトルが目に留まったのだった。
なんでも、日本での版権が1月一杯で切れるそうで、
それで最終上映会。
サルに似た愛らしいチェブラーシカ
友達のワニのゲーナらが繰り広げる、楽しいエピソードたち。
でも、どこか、ソ連のイメージとして抱きがちな、
暗さ、もの悲しさのようなものが漂っていて、
それがまた、胸をキュッとさせる、いいスパイスに。
ワニのゲーナが奏でるアコーデオンのメロディなんか、
まさにそうなんだけど、良い曲でね。
あと、たまに聞き覚えある単語が出てきたり、
画面のロシア文字が読めたりしたのも、僕にはまた楽しかった。
 
いや〜、盛りだくさんな一日だった。
疲れてて、明日、動けないかも(笑)。

ただ今のBGM

『ПУЧШИЕ РЕМИКСЫ РАДИОЭФИРА』。
乗り継ぎのモスクワの空港で買ったコンピ。
ダンサブル。