『国家の品格』

数学者・藤原正彦の日本論。
武士道に重きを置く筆者は、
欧米的価値観に基づく論理万能・効率追求の世の中を見直し、
「情緒と形」に基づく日本の品格を取り戻して、
世界に範を垂れるべしと説く。
 
ここまで、伝統的日本文化の優秀性を肯定し、
言い切ってしまうのは凄いですね。
 
「論理=正」という考え方の否定を、幾度と無く繰り返すのですが、
間違っちゃいけないのは、
筆者は「論理」を否定しているのではなく、
論理の重要性は十分に認めているという事実です。
「それは多くの人が言っているので、ここで自分は論じない」と、
本作の中で、サラリと述べてますが、
ここを見落とすとヤバイですね。
そもそも、数学者である著者は、当然、
論理の重要性を嫌と言うほど認識しているわけですから。
 
講演を元にした著書ですし、
綿密に論を展開するのではなく、論理の飛躍は百も承知で
かなり刺激的に論を展開しているのではないでしょうか。
なので、著者の言葉を無条件に信じ、
まるっきり心酔してしまうのは危険ですが
(というか、そんな人いるのか?)、
うなずくところは多々あります。
ものの考え方・見方の一つとして、自分の中に持っておくのは、
有効だと思います。
「オイオイ」と笑ってしまうところも含めて、面白い本です。
 
先日読んだ『他人を見下す若者たち』といい、本作といい、
奇しくも効率主義というものを見直すことを説き、
感情や情緒の重要性を訴えている。
そして、これらが売れている。
その事実が、今の日本の(中高年の?)雰囲気を伝えている。
これまた、おもしろいね。

ただ今のBGM

楊丞琳『曖昧』。
台湾のアイドル歌手ですかね。
先月の台湾出張時に
「2005年新人王」なんてウリに惹かれて買ってみた。
うーん、そんなに印象には残らないかな。